江城のとある公園。森岡翔と中村薫は、川のほとりに座っていた。中村薫は、森岡翔にこれまでの20数年間の出来事を語った。森岡翔は静かに、彼女の話を聞いていた。「社長、私ってバカですよね?彼らは欲しいものを言えば、私が何でも買ってあげた!お金がなくても、借金してまで。そして、私は節約して、少しずつ返済してきたんです」中村薫は話し終えると、尋ねた。「薫、お前はバカじゃないよ。ただ、情が深すぎるんだ。お前が与えれば与えるほど、彼らはそれを当然のことだと思うようになる」森岡翔は少し考えてから答えた。「そうかもしれません!でも、私は決めたんです。これまでの20数年は、彼らのために生きてきた。でも、これからの数十年は、自分のために生きたいんです!」「薫、明日、お父さんとお母さんをホテルに招待して、一緒に食事をしよう!せっかく遠くから来てくれたんだ、俺も何かしないと。もし金が必要だったら、経理から好きなだけ持っていけばいい。お前がどんな決断をしても、俺は応援するから」森岡翔は言った。「ありがとうございます、社長!」中村薫は森岡翔の胸に顔をうずめて、泣きながら言った。彼女は、森岡翔が自分の家族のせいで、自分を軽蔑するのではないかと心配していた。しかし、彼はそんな素振りは一切見せなかった。実は森岡翔も、幼い頃に両親を亡くし、叔父の家に引き取られたが、そこで辛い日々を送っていた。しかし、彼には自分を可愛がってくれる叔母が二人いた。一方、中村薫には、誰もいなかった。森岡翔は、そんな彼女のことを不憫に思っていたのだ。何でも家族のためにと思って尽くしてきたのに、結局は金づるとしてしか扱われていなかった。「薫、思いっきり泣けよ!泣けば少しは楽になる」森岡翔は、中村薫の背中を優しくさすって言った。中村薫は、森岡翔の胸の中で30分ほど泣き続けた。彼の胸の服が、自分の涙で濡れているのを見て、彼女は少し恥ずかしくなった。「社長、ごめんなさい!服を濡らしちゃって」「大丈夫だ!薫、行こう、帰るぞ」二人は江南インターナショナルマンションに戻った。すると、中村陽たちはもういなかった。「社長、彼らを探しに行きます!」そう言って、中村薫は外へ出ようとした。しかし、森岡翔に腕をつかまれた。「薫、お前はこれから自分のために生きるって言
翌日の午前。金葉ホテルの会長室。「薫、新しい投資会社を設立しようと思っているんだ。名前は東莱インターナショナル。でも、俺には時間がないから、信頼できる人に組織作りを任せたい。薫に頼みたいと思っているんだ」「社長、私にできるかどうか…」中村薫は少し迷いながら答えた。彼女はやってみたいと思っていたが、自分の能力が足りず、森岡翔の事業に迷惑をかけてしまうのではないかと不安だった。「薫、お前には能力がある。この小さなホテルにとどまっているべきじゃない、もっと広い世界を見てくるべきだ」「そ、そうですね…やってみます!」「思い切ってやってみろ!俺が最大限のサポートをする。金はいくらでも出す。ヘッドハンティングしたい人がいれば、どんどん声をかけて、給料は相手の5倍、10倍で構わない。優秀な人材なら、金は惜しまない」「わかりました!いつから始めればいいですか?」「早ければ早いほどいい!」「では、明日出発します!」「ああ、それと、お父さんとお母さんを呼んでくれ。みんなで一緒に食事をしよう」昨夜の出来事があって、森岡翔は中村薫が変わってしまったと感じた。以前の彼女は、楽観的で明るい性格だった。しかし今の彼女は、冷徹なビジネスウーマンへと変貌しつつある。正直なところ、森岡翔は以前の明るい中村薫の方が好きだった。たまに彼に見せる、無意識の誘惑がたまらなかった。しかし、仕方がない。人はさまざまな経験を通して、変わっていくものなのだ。一方。中村鉄たちは、普通のホテルに泊まっていた。午前中、皆で集まって、中村鉄の決断を待っていた。「お父さん、今日はどうするんだ?」中村陽が尋ねた。「どうするって?ホテルに行って、直接彼女に会いにいくんだよ!」「でも、姉貴が会ってくれなかったら、どうするんだ?」「会わない?俺が彼女を育ててきたんだぞ!今になって、親父を無視する気か?それなら、職場で大騒ぎしてやる!同僚の前で恥をかかせてやる!」「そうよ、そうしましょう!あの生意気な娘、私たちを捨てようとしてるけど、そうはさせないわよ!」石川春花も同意した。藤堂穂の家族は何も言わなかったが、心の中では、中村陽が中村薫に助けてもらえることを願っていた。娘の将来の幸せがかかっているのだ。彼らが金葉ホテルへ向かおうとしたそ
中村薫は何度も深呼吸をして、怒りを抑えようとした。「わかったわ。じゃあ、一番下のウェイターから始めなさい」「姉貴!ウェイターなんて嫌だよ。俺に人を管理する仕事、穂にはお金を管理する仕事をさせてくれよ。そうすれば、義兄が金を持っても外で女遊びなんかできないだろ。義兄の行動は全部姉貴に報告する。これは、お母さんが言ってたんだ。俺ら2人で姉貴を助けるって!」中村陽は厚かましくも言った。中村薫は、あまりのことに呆れて、笑ってしまった。人を管理?お金を管理?助けるって?森岡翔を操ろうとしているのか!このホテルを、中村家のものにするつもりなのだろうか?よくもそんなことが言えるものだ。「お金を管理したい?ここの月の売り上げがいくらかわかってるの?この食事がいくらかわかってるの?教えてあげるわ。あなたたちが今食べているこの料理は、2000万円よ。ここの月の売り上げは、200億円近いのに、あなたたちに管理できると思ってるの?」中村薫がそう言い終わると。全員が食事の手を止めた。そして、驚愕の表情で彼女を見上げた。一食で2000万円?いくらなんでも、高すぎるだろう!「姉貴、今…この食事、いくらだって言った?」中村陽は食べ物を飲み込みながら、小声で尋ねた。「あなたたちが食べているこの料理は、全部で2000万円よ」彼らはしばらくの間、黙り込んでしまった。衝撃が収まると。石川春花が言った。「ここは、そんなに儲かってるの?お前の目は確かだったようだな。私たちも、もう帰るつもりはないよ。今まで苦労してきたんだから、そろそろ楽させてもらいましょう」「そんなに金があるんだから、早く陽に家と車を買ってやりなさい。そうすれば、早く結婚して、落ち着いてくれるだろう」中村鉄も言った。中村薫は、家族の姿を見て、あきれてものが言えなかった。みんな同じ穴のムジナだ。彼女は、こんな家族に生まれた自分を、本当に不幸に思った。最初は、血の繋がった家族だから、できる限り助けてあげようと思っていた。しかし今、彼女は一刻も早く、この場から逃げ出したかった。もう二度と、彼らに会いたくなかった。「あなたたちは、ゆっくり食べてて。私はちょっと外へ」そう言って、中村薫は席を立った。彼女の心は、完全に冷め切っていた。家族全員で、自
食事の後、彼らは個室を出ると、ウェイターに案内されて会長室へと向かった。「義兄さん!姉貴は?」中村陽は尋ねた。「ちょっと!義兄さんって呼ぶな!言っただろう、俺と薫はただの上下関係なんだ!決して一線を超えたことはしていない。それに、俺はまだ大学生だし!どうして俺がお前の義兄になれるんだ!」森岡翔は言った。彼らは顔を見合わせ、何かおかしいと感じた。さっき食事をしている時は、義兄さんと呼んでも問題なかったのに、今はダメなのか?「あの…森岡社長、姉貴は?」中村陽は再び尋ねた。「お前の姉さんは、もういない。食事も終わったことだし、帰るんだな」森岡翔は答えた。「いない?じゃあ、探しに行く!」「俺が言ってるのは、ホテルからいなくなったんじゃなくて、江城からいなくなったってことだ。これは薫の退職届だ、自分で読め」そう言って、森岡翔は中村陽に一枚の紙を渡した。退職?彼らは驚き、嫌な予感がした。中村陽は紙を受け取って見てみると、本当に中村薫が書いた退職届だった。「森岡社長、どうして姉貴は辞めたんですか?」「うーん、どう言えばいいか…薫は、ここにいれば、お前たちがいつまでも付きまとってくるだろうと思ったんだろう。そして、彼女は、お前たちの要求に応え続けることはできない。だから、ここを去るしかなかったんだ」森岡翔は答えた。「じゃあ、姉貴はどこに行ったんですか?」「わからない。たぶん、大学時代の友人を頼って、どこかへ行ったんだろう」すると、石川春花は慌てて携帯電話を取り出し、中村薫に電話をかけた。「おかけになった電話番号は、電源が入っていないか、電波の届かない場所にあります。恐れ入りますが…」ダメだ。全部ダメだ!石川春花は、その場にへたり込んだ。「ふん!お前、あの生意気な娘とグルになって、俺たちを騙したな?言っておくが、彼女が出てくるまで、俺たちはここから動かないぞ!」中村鉄は、怒りに満ちた顔で森岡翔に言った。「おじさん!ここで怒鳴らないでください!あなたの娘が出て行ったのは、私が無理やり追い出したわけではありません。彼女を追い出したのは、あなたたち自身でしょう?私に関係ないことです。ここで暴れたら、あんたが悪くなるだけですよ!」「そんなことは知らん!彼女が出てくるまで、俺はここにいる!どうせ、毎日う
藤堂穂の両親は、娘を連れて帰ろうとした。彼らは中村鉄の狂気に付き合うつもりはなかった。本当に逮捕されたら、どうするんだ?「穂!」中村陽は叫んだ。藤堂穂は、悲しそうな顔で中村陽の方を見た。「まだそんな甲斐性なしを見てどうするんだ!せっかくいい機会だったのに、あの子を追い出してしまったじゃないか。おかげで何も手に入らなかった。あいつに、いつ家や車が買えるっていうの?さっさと帰るぞ、もうあいつとは関わるんじゃない。お母さんがもっといい人を見つけてあげるから」藤堂穂の母は娘を引っ張りながら、中村陽に向かって冷たく言い放った。中村陽は、天国から地獄に突き落とされた気分だった。中村鉄と石川春花も、怒りで顔が真っ赤になっていた。もし中村薫が連絡先を変えてしまったら、もう二度と会えないかもしれない。それに、この何年も、中村薫は毎月きちんと仕送りを送ってくれていた。彼らはもう、その生活に慣れてしまい、長い間まともに働いていなかったのだ。村では、彼らの家は誰もが羨む存在だった。働きもせずに金が入ってくるなんて、いい娘を持ったものだと。それが、突然途絶えてしまったら、どうするんだ?また、朝から晩まで、汗水たらして働かなければならないのか?村の人たちは、彼らをどう見るだろうか?こうして二人は、あの時、湖城に来なければよかったと後悔した。家にいたら、こんなことにはならなかったのに!毎日、麻雀をして、ぶらぶら散歩して、一日が終わる。そんな生活を送っていたのに。全部、陽が悪い。あのバカ息子さえいなければ、今でも家で悠々自適に暮らしていたのに!全部、パーになってしまった!二人は、自分たちがこれまで中村薫を厳しく扱いすぎたことについては、まったく反省していなかった。ただ、陽の言葉を聞いて、田舎から出てきたことを後悔しているだけだった。もちろん、彼らの考えも間違ってはいない。もし彼らが家にいたら、中村薫は今まで通り、毎月お金を送ってくれていただろう。森岡翔は静かにソファに座り、彼らの様子を見ていた。彼は金で中村陽たちを追い払うこともできた。たとえ彼らが法外な金額を要求してきたとしても、森岡翔には払えるだけの財力があった。しかし、彼はその金を払うつもりはなかった。こんな家族に育ちながらも、中村薫は堕落しなかっ
午後、森岡翔は新しい会社を設立した。社名は「東莱インターナショナル投資株式会社」。中村薫が社長を務め、金葉ホテルも傘下に入ることになった。しかし、今はまだ会社の形だけで、中村薫がさまざまな人材を集めなければ、本格的な事業は始められない。翌日。森岡翔が金葉ホテルに着くと、中村陽とその両親が、屋外駐車場の隅っこに隠れているのを発見した。やっぱり、彼らはまだ諦めていなかったのだ。森岡翔は彼らを無視して、そのままホテルの中へ入って行った。午前中は、特にすることもなく過ぎていった。途中、森岡翔は宅配便を受け取った。SCC本部から送られてきた、上級会員のバッジだった。バッジと言っても、実際にはSCCのロゴが刻印された指輪だった。森岡翔がホテルを出ようとしたその時、思いもよらない電話がかかってきた。電話の相手は、相川沙織の親友である渡辺艶だった。渡辺艶は、相川沙織が突然倒れて、今病院にいると告げた。森岡翔は、電話を受けて、一瞬固まった。相川沙織が倒れたって、俺に関係ないだろ?別れたのは彼女の方だぞ!電話するなら、高坂俊朗だろ?森岡翔は無視しようと思った。しかし、考えているうちに、どうしても気になってしまった。やっぱり、行こう。4年間の思い出があったんだ。自分自身に、けじめをつけるためにも。彼は車で渡辺艶に教えられた病院へ向かい、途中で果物を買った。限定モデルのブガッティ・ヴェイロンで果物を買いに行くなんて、当然、周りの人々の注目を集めた。果物屋は人でごった返し、店主は大喜びだった。あっという間に、普段の1日分の売り上げを達成してしまった。森岡翔は、いつもより多めに果物を買った。彼は病院の廊下を歩いていた。すると、診察室から、二つの声が聞こえてきた。「先生、お願いです、私の母を助けてください!お願いします!」「ああ…申し訳ありませんが、ここは慈善団体ではありません。お金がないと、治療はできません」「とにかく治療してください!必ずお金を用意しますから!」「正直に言いましょう。お母さんの病気は非常に重篤です。この病院で手術をしても、成功率は高くありません。もっと医療設備の整った病院を探した方がいいでしょう。そうすれば、成功率も上がるはずです」「先生、母はあとどれく
病院を出ると、森岡翔は深呼吸をした。すべてが終わった。完全に吹っ切ることができた瞬間。森岡翔は、今までにないほどの解放感に包まれた。彼は車を走らせ、病院の門を出た。「泥棒!泥棒!」彼の耳に、叫び声が飛び込んできた。森岡翔は急いで車を路肩に停めた。すると、少し先に若い男が財布を持ったまま、こちらに向かって走って来るのが見えた。後ろからは、30代くらいの女性が必死に追いかけてきた。「邪魔だ!どけ!死にたいのか!」若い男は走りながら、もう片方の手でナイフを振り回して叫んでいた。森岡翔は、体力を限界まで上げた自分の力を試してみたかった。ちょうど彼が動こうとしたその時、黒い影が猛スピードで目の前を横切った。森岡翔が泥棒の方を見ると、すでに片腕で地面に押さえつけられていた。泥棒は地面でもがき苦しんでいたが、鋼鉄のような腕から逃れることはできなかった。上級だ!間違いなく上級だ!それが、森岡翔の第一印象だった。森岡翔の精神力はすでに限界に達しており、五感が研ぎ澄まされていた。先ほど男が自分の横を通り過ぎた時、彼からは並外れた気迫を感じたのだ。彼は男の顔をよく見ると。病院で、医師に母親を助けてくれるよう、泣きながら懇願していた男ではないか!阿部破軍は、焦燥感に駆られながら、病院から出てきた。母親の病気は深刻で、多額の治療費が必要だった。しかし、彼には金がなかった。この数年、彼は海外で傭兵として働いてきた。たくさんの金を稼ぎ、もうすぐ家族を幸せにできると思っていた。しかし、最後の任務、とある小国の要人の講演を守る仕事で、正体不明の集団に襲撃され、12人の仲間のうち、生き残ったのはわずか3人だけだった。帰国後、3人は稼いだお金を、亡くなった仲間の家族にすべて分け与えることにした。自分たちは、少なくとも生きて帰ってくることができた。しかし、生死を共にしてきた仲間たちは、二度と故郷に帰ることができなかったのだ。しかし、まさか母親がこんなにも急に病に倒れるとは、彼は思ってもみなかった。すぐに手術をしなければ、手遅れになってしまう。だが、一体どこで、そんなに大金を工面すればいいというのか?金の切れ目が縁の切れ目、という言葉がある。ましてや、今回必要なのは、途方もない金額だ。どう
「阿部さん、私は森岡翔だ。これからは森岡さんと呼んでくれ」「森岡さん、阿部さんと呼ばないでください。破軍でいいです」「わかった、破軍。ちょっと手合わせ願えないか?」森岡翔は、以前から自分の実力を試してみたかったのだ。体力と精神力を限界まで高めてから、森岡翔は五感が格段に鋭くなり、体の中には無限のパワーがみなぎっているのを感じていた。「森岡さん、どうぞ!」阿部破軍は言った。彼もまた、この若者から感じた、かすかな脅威の正体を知りたかった。二人は10メートルほど離れた場所で、向かい合った。森岡翔には、格闘技の経験はなかった。鋭い感覚と、爆発的なパワーだけが、彼の武器だった。彼は全身の力を振り絞り、体中に力を漲らせた。その瞬間、森岡翔から放たれるオーラは、まるで古代の恐竜のようだった。阿部破軍は、強烈なプレッシャーを感じた。驚きながらも、彼もまた、長年、生死の狭間を彷徨ってきたことで身につけた、血なまぐさいオーラを漂わせた。森岡翔は地面を力強く蹴り、一瞬で阿部破軍との距離を詰めた。そして、迷うことなく拳を繰り出した。ただの手合わせなので、そして、森岡翔はまだ自分の実力を完全に把握していなかった。そのため、この一撃には、5割程度の力しか込めていなかった。森岡翔が突進してくるのを感じ、阿部破軍は強烈なプレッシャーに襲われた。ほんの一瞬、気を取られた隙に、森岡翔の拳が迫ってきた。彼は慌てて両腕をクロスさせて、胸の前でガードした。「ドンッ!」阿部破軍は森岡翔の一撃を受け、7、8メートルも吹き飛ばされた。森岡翔は、先ほど阿部破軍が立っていた場所に立ってて、歯を食いしばって、少し痛む右手を振った。一方、阿部破軍は、赤く腫れ上がった自分の腕を見て、驚きを隠せない様子だった。森岡翔の強さは、彼の想像をはるかに超えていた。最初、彼は森岡翔からわずかな脅威を感じてはいたものの、それほど気にしていなかった。なにしろ、森岡翔は若すぎる。まだ20歳くらいだろう。こんな若者が、いくら小さい頃から鍛錬を積んでいたとしても、長年戦場で生き抜いてきた自分に敵うはずがない。そのため、心の中では森岡翔を多少なりとも見くびっていた。しかし、たった一撃で7、8メートルも吹き飛ばされ、腕を腫れ上がらせられてしまったのだ